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ツイッターで見つけた英語記事を和訳しています。

任天堂最新作ゼノブレイド拡張版はプレイヤーを新鮮なRPGの世界に自然と引き込む

ロールプレイングゲームは敷居が高い。戦い方やキャラクターのカスタマイズに戸惑うことがあり、ストーリーを最後まで見届けるために100時間もかかってしまう。RPGに関する知識で高橋哲哉氏の右に出るものはいないだろう。クロノトリガーFinal Fantasy VIIといった名作の制作に関わるアーティスト・デザイナとしてスタートを切ってから、自身が運営するスタジオ「モノリスソフト」を創立することになり、自由度の高い複雑なRPGの制作に特化している。つい最近、高橋氏率いるチームがゼノブレイド2をNintendo Switchでリリースした。そのSFストーリーは驚くほどのヒットとなり、去年12月の販売開始から1400万本を売り上げた。

 

このゲームのスケール感覚は秀逸だ。ゼノブレイド2の世界では、人類が生活しているのは「タイタン」と呼ばれる巨大生物の背中である。タイタンはあまりにも巨大であるため、生態系そのものがタイタンの中にあり、まるで生きている島が空中に浮かんでいるようだ。また、ゼノブレイド2は非常に複雑である。人間の冒険者たちは感情的繋がり(キズナ)を持ち、ブレイドという人型の武器がある。こういったユニークな設定を備えた結果、今作の戦闘システムでは数多くのキャラクターと戦略を使い分ける必要があるのだ。

 

モノリス社のファンはこのスケールと複雑性を愛している。しかし多くの新規プレイヤーがゼノブレイドシリーズに取っつきにくさを感じていることも高橋氏は理解している。「当社が受け付けたフィードバックの中に、全体的なシステム、具体的には戦闘システムが少々慣れにくいといいますか、敷居が高いという意見がいくつか寄せられていました。なので、ゼノブレイドが持つシステムをそう感じるかもしれない新規プレイヤーの方々には、初めから親しみやすいシステムを提供したいというのが私たちの願望でした」と高橋氏は語った。

 

そのソリューションは「ゼノブレイド2 黄金の国イーラ」という、ゼノブレイド2のスタンドアロン型エキスパンションの形で実現し、22日にSwitchで発売された。今作のボリュームの小さい自己完結型の体験は、ゼノブレイドシリーズの入門には理想的な作品として受け入れられた。黄金の国イーラのストーリーを理解するのにオリジナルをプレイする必要はない(ファンにとっては、お気に入りのキャラクターたちの背景を更に深く掘り下げる拡張要素である)。この拡張版は原作の約1/4サイズであり、プレイ時間にするとかなり手頃な20時間程度になる。

 

序盤ではチュートリアルをより多く取り入れ、戦闘システムやキャラクター育成、その他にもマップなど、混乱しがちなシステムについて解説することで、プレイヤーが理解しやすいように敷居を下げている。これらの変更点はユーザエクスペリエンスを大きく変えることなく、オリジナルにあった粗削り部分をスムースにしているのだ。

 

貪欲なゼノブレイドファンとRPGジャンルに引き込みたい新規プレイヤーの両方を満足させられるゲームを作る、という課題を高橋氏は抱えていた。「どうやって『完成しているゲームだ』とゼノブレイドファンに感じてもらえるエクスペリエンスをフルゲーム価格にせず提供できるのか、に全力を尽くしました」と同氏は語る。実際ではイーラはメインゲームの一部として販売開始したが、高橋氏と開発チームがSwitchにプロジェクトを合せるよう精査したところで、サイズが大きすぎることに気づいたためにカットしたのだ。しかし時間が経過し、オリジナル発売後のダウンロードコンテンツにあてるシナリオを探したとき、彼らは既に完成したコンセプトを持っていた。

 

オリジナルの約1/4サイズであるが、それでもイーラはかなり大きな印象が残る。ストーリーは戦争中に起こる長大な冒険であり、オリジナルのゼノブレイド2での出来事を補足しつつゼノブレイドシリーズお馴染みのメロドラマティックな紆余曲折が盛り込まれている。その間もスケール感は止むことのない驚きの連続で、遠くから壮大な山を眺める瞬間などはただ感動するしかなく、しかもそれが足元にいる巨大なタイタンの頭だったことに気づくのである。

 

エクスペリエンスを成す珠玉のパーツが、相当に短いゲームの中でも効いているのである。高橋氏は最低80時間連続のゲーム制作に慣れていたが、その時間枠では氏の最大の課題であるストーリーを収めることができず、納得のいくゲームの機序とフローを作っていた。「20時間程度のダウンロードコンテンツにある普通のRPGと同等のエクスペリエンスを届けようと、私たちが本気で取り組んだ課題は『バランス』でした。モンスターの配置だとか、全体を通しての戦闘回数だとか、マップごとの構造だとか、私たちはあらゆることのバランスに全力を尽くしました」と同氏は説明した。

 

イーラで新規プレイヤーを獲得できるかもしれないと意気込む高橋氏の一方で、今回の拡張版はモノリス社の方針のシフトを表しているとは限らない。高橋氏は壮大なゲームが好きで、それは高橋氏だけに限らないというだけだ。「ゼノブレイドシリーズのファンは、その長大なエクスペリエンスが気に入っていることが分かってきました。そしてファンはゼノブレイドの世界に長く居続けられるようにゲームを楽しんでいるのです」と同氏は語った。

 

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