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ツイッターで見つけた英語記事を和訳しています。

Apple社のサービスが数十億ドルを稼ぐ仕組み

Apple社の狙いは変化し続けている。近年はiPhoneの売り上げが伸び悩み始め、APP Storeからライセンシング事業までApple社サービス事業全体が今後の成長を狙う大航海事業として位置付けられた。Apple社はスマホで利用できる手堅いサブスクリプションサービスを、これまで以上に販売促進したい考えだ。

 

Apple社の新たな指針は来週開催するApple社の「It’s Show Time」イベント内で明らかになるだろう。このイベントで大規模な新サブスクリプションサービス二つを披露する様子だ。一つは独自の番組や映画を配信するTVサービス、もう一つはプレミアムなニュースソースや記事を併せ持つApple Newsサービスだ。

 

Apple社CEOであるティム・クック氏によると、サービス事業は前期109憶ドルを計上し、「全地域ごと」で過去最高額を記録した。またクック氏によると、2016年から2020年までの間にサービス事業の売上を二倍にする見通しで、前期の売上は前年比で19%増加したとみられる。

 

これはApple社の他の事業部と比較して大きな数字だ。四半期あたりの売上は、Mac(前期74憶ドル)、iPad(前期67憶ドル)、「ウェアラブル、家庭用、付属品」の製品集合グループ(前期73憶ドル)と比べても、既にサービス事業の方が上回っている。Apple社がサービス事業をより強く推進し、新たなサービスが一般に流通するようになれば、収入の割合は更に変化し続けることだろう。


では、既にこれほどのサービス事業の売上があるのだが、それらの健全性についてはどうだろうか。Apple社はサービス事業の個別の収入を公開していないため、現時点で私達が言えることは少ない。ただし事業の構成や、料金体系や、どんなメリットがあるのか、私達は確実に分かっている。サービス事業が新たな時代に突入することを踏まえて、今日の状況の概要を以下に記した。

 

APPLE MUSIC

間違いなくApple MusicはApple社のサービス事業の顔とも言えるエントリーだろう。最新(Beats Musicを買収・リブランディングした直後の2015年ローンチ)かつ、注目を集めた存在である。

 

Financial Timesによれば、ミュージックサブスクリプションサービスは2018年12月時点で5,600万人の顧客がいる。これに対して、Spotifyは2019年2月時点で9,600万人の有料顧客だ。

 

実際に料金を支払っているApple Musicの顧客数は不透明である。Apple社は無料試供版を提供しており、Verizon社のワイヤレスプランの抱き合わせもある。

 

全顧客(家族プラン、年間割引、抱き合わせ、学生割、無料ユーザを概算で含む)が月額10ドル支払っていると仮定すると、Apple Musicは大きく見積もって年間67憶ドルの収入になるだろう。

 

料金:月額10ドル(学生プラン5ドル,家族プラン月額15ドル)

Apple社の収益化方法:サブスクリプション費用、提携費用

 


APP STORE / MAC APP STORE

 

Apple社の最大の収入源の一つと思われる、世界的に普及しているAPP Storeは2018年5月時点までの10年間に1700憶ダウンロードを達成したと推算される。

 

このサービスの購入に対して直接利益を受けることはないが、APP Storeサービスの収入の大部分はFortniteやCandy Crushといった無料ゲーム内の課金や、Netflix、Tinder、YouTubeといったサブスクリプション方式のアプリから発生している。App Annie最新の見積もりによるとAPP Store内の売り上げトップ50アプリは、サブスクリプション費か無料ゲームのどちらかに頼って運営している。大人気の有料ゲームMinecraftやFacetuneも、ゲーム中の課金要素を取り入れて売上を強化しているにも関わらず、課金要素のみに頼る無料ゲームほどの数字になっていない。Apple社はそういったアプリ中の課金やサブスクリプション費から一部を受け取っているのだ。

 

このような「無料」アプリが相当額の売り上げに繋がった。2018年6月時点までに、Apple社はApp Storeデベロッパー達に1,000憶ドルを支払っている。売り上げをApple社と7対3で分割(基本的に売り上げの一部を取り分にする)したとして、App Storeを運営した10年間でデベロッパーによる総売上が約1,420憶ドル、そのうち420憶ドルがApple社の収入になった計算だ。

 

とは言え、この数か月の間Apple社はApp Storeの運営モデルを非難されてきた。Apple社がiPhoneのアプリを不当に独占しているとして、最高裁iOS App Store独占禁止法違反に係る訴訟の公聴会が開かれた。更にApple社が売上の30%を徴収していることはApple社のストリーミングサービスであるApple Musicを優位にしており、Apple社は不当な利益を受けているとして、Spotifyは別件の独占禁止法違反で欧州連合に対して告訴した。

 

料金:購入するコンテンツによる

Apple社の収益化方法:ゲームアプリ内の課金、アプリの売り上げ、サブスクリプション

 


ICLOUD

Apple社は僅かだが5GBストレージを全顧客に無償で提供しているため、iPhoneiPadMacなどのApple社製品を所有する
顧客の全員はiClousユーザであると言える。しかし売上にとって重要なのは、月額費用でストレージを追加する有料プランだ。

 

ファイル格納・共有というと、iCloudDropboxGoogle Driveと並ぶブランドとして認知されていないが、ユーザ獲得の面で大きなアドバンテージがある。iCloudiPhoneiPadをインターネットにバックアップできる唯一の手段なのである。更に、その容量ほぼすべてが手持ちのスマホに付加されるのだ。たとえば写真を撮影し過ぎたとき、機器はバックアップを止めてしまう。そのとき、Apple社が無償提供する貧相な5GB以上を利用できるとなれば、大金を支払わせる動機を作り出せる。

 

Apple社もそれを理解している。iCloudの一番安いプランはストレージ50GBにつき月額たった99セントで、ユーザに売れやすい価格だ。しかし顧客一人につき年間12ドルが、たとえ購入層が僅かだとしても世界の何十億のiOS機器に渡って売れるのである。2016年にApple社シニア・バイスプレジデントであるエディー・キュー氏を取材した時点で、7億8200万人のiCloudユーザがいることが判明しているものの、キュー氏触れたのは全ユーザ数であって、Apple社が有料ユーザの数を公表したことはない。

 

料金:月額0.99ドル(50GB)、月額2.99ドル(200GB)、月額9.99ドル(2TB)。200GBプランと2TBプランは家族用プランとして共有可能

Apple社の収益化方法:サブスクリプション費用

 


ITUNES / APPLE BOOKS

iTunesストアに以前のような怒涛の勢いはない。SpotifyApple Music、Netflix、Huluといったストリーミングサービスの影響を受けて、最近のユーザは音楽や番組や動画をほんの少しだけ購入する傾向がある。それでも、iTunesストアは今でも収益に繋がっている。iTunesストアは膨大な範囲のコンテンツから購入できるワンストップサービスであり、Apple社の他のサービスと同じく、全デバイスの中心に位置するサービスだ。夜の映画鑑賞にApple TVで映画を借りたくなった、というとき、そこにあるiTunesがすぐに利用できるよう待機している。更にiTunesSamsung社のスマートテレビでも利用できるようにApple社が拡張している方針から、iTunesは依然として、今後もApple社の収入化戦略の大部分を担うように見受けられる。

 

更にApple Booksも戦略に含まれている。これは基本的に書籍版のiTunesだ。Apple Booksは競争相手であるAmazonの巨大Kindleライブラリと訴訟問題になったことがあり、卑しくもApple社は固定料金スキャンダルの解決を試みた結果、4,500万ドルを支払うことになった。そういった経緯があっても、Apple Booksは電子書籍業界の最大手であり、サービス業収入の手堅い収益源の一つである。

 

最後にApple社のサービスの中では不人気であるが、iTunesにはiTunes Matchのサブスクリプションサービスというものがある。年額25ドルの費用でiTunesの楽曲をデバイス間に渡って同期できるというもので、すべての楽曲を購入しなければならない一種の個人向けクラウドミュージックサービスだ。

 

料金:購入するコンテンツによる、iTunes Match年額24.99ドル(iTunes MatchはApple Musicに含まれる)

Apple社の収益化方法:コンテンツの購入、サブスクリプション費用

 


APPLE PAY

Apple PayはApple社の包括的決済システムであり、Apple Payを利用するウェブサイトでの購入やアプリ内の課金、店舗でのやりとり不用の決済、Apple Pay Cashを使った送金(Apple社が運営する、Venmo社と類似の個人間決済システム)もこれに含まれる。

 

Apple社によるとApple Payを使用する「ユーザ、商品、開発者」のいずれにも課金しないというが、各取引ごとに少額の費用を取っていることが報告で示唆されている。外見上はApple Payに使用するカードの発行元である銀行が差し引くことになっている。Apple Payをローンチした2014年の報告だと、アメリカ国内の銀行に対して100ドルの決済毎に0.15%、つまり15セントの費用がかかっている。

 

Apple社によれば前期のApple Payの取引数は18憶であり、前年比は二倍以上だ。それらの取引額は不明であり、しかも取引の大半はアメリカ国外のモバイル決済が盛んな国々で行われている。とは言えApple社が収入を得ているのは膨大な量の取引からだ。

 

Apple社はApple Pay Cashからも収入がある。デビットカードを使った送金に料金はかからないが、クレジットカードを使った送金には一律3%を徴収するサービスだ。

 

料金:Apple Pay Cashに登録したクレジットカードによる送金額の3%

Apple社の収益化方法:ユーザーと銀行からの手数料

 


APPLECARE

AppleCare+はApple社の延長保証サービスである。ユーザは購入したApple社製品の長期・包括的保証を受けられる。大抵は画面交換の割引か機器の取り換えに利用するが、それは対象機器による。

 

AppleCare+はiPhoneアップグレードプログラムの一部に含まれている。他のApple社のサービスと同様に、どれほどのユーザが延長保証を購入したのか明らかにしていない。

 

料金:製品による。iPhoneは129~199ドル、MacBookラップトップは249~369ドル、iMacMacデスクトップは99~249ドル

Apple社の収益化方法:保証費用

 


ライセンシング

これは上記のリストとは違い、顧客向けのサービスではない。Apple社は企業に対して、サービスをiOSに組み込むライセンスを販売している。デフォルトのサーチエンジンGoogleであったり、天気情報を Weather Channelが提供しているのがそれだ。Apple社の全デバイスの特等席というのはリターンが大きく、またApple社のサービス事業の収入の大部分もそこにある。

 

ライセンス契約はApple社の事業の中でも特に不透明な領域であり、最後に確認できた数字は2014年、裁判所で公開されたApple社とGoogle社のレベニューシェア同意書の一部に、iOSのデフォルトのサーチバーを継続する旨で、Apple社に対して10憶ドルを支払っていたことが判明した。しかしアナリスト達による最近の見積もりだと、Apple社の請求額はおよそ90憶ドルである。もしこの数字が正しければ、Apple社が持つサービス事業全体の中でも最大規模を占めるサービスの一つということになる。

 

料金:Bingサーチを愛用するユーザでない限り無料

Apple社の収益化方法:Googleといった企業から受けるApple社製品に組み込むライセンス料

 


MAPS, SIRI, FREE ICLOUD

ここが奇妙である。前四半期からApple社が受けるiPhoneiPadMacすべての販売価格の一部を、サービスに投じる資金に転換したため、今後は複数期に渡って分散するようになる。基本的にApple社は地図、Siri、iCloudの一部(iMessageなど)の「無料」サービスを重要視しており、それらはデバイスの価格に含むとみなすのだ。

 

これは示唆に富む変化であり、Apple社が上記無料サービスのファクタリングを開始した2018年第1四半期の総サービス売り上げ高は7.7%伸び、報告されていた元の84.7憶ドルから91.3憶ドルに増えた。

 

料金:無料のようだが、実質的にiPhone購入時に支払っている

Apple社の収益化方法:ハードウェア購入

 

www.theverge.com